80歳からでもできた「独身女性の家開き」そして その最期がもたらしてくれたもの!

令和になった5月の末、
10年以上のお付き合いのあったお客様が
ご自宅で老衰で亡くなりました。
訪問介護の医師が見守る中
ご自身のベットで静かに息を引き取りました。

ずっと独身であった彼女には
付き添える家族も
親族もいなくなっていたため
私と弊社のスタッフだけで 
葬儀を済ませました。

全くの他人ではありましたが 
彼女を孤独死させず
最期まで関わらせて貰えた事は
私たちにとっても
本当に良かったことだと思っています。

彼女の家を大々的にリノベーションさせてもらったのは2007年!
歳を重ねてきて全く片付けられなくなっていた彼女のお部屋を
誰もが分かりやすく 片付けやすく
素敵なインテリアに変えさせてもらいました。
そして彼女はそこで 最期まで
お部屋をきれいに保ち
たくさんのヘルパーさんを受け入れて
心穏やかに 住んでくださいました。
これから 誰も住まなくなった彼女のお部屋の片付けも
私たちがさせていただきます。

彼女には 家庭裁判所が決めた公的な成年後見人もいます。
しかし 後見人はあくまでも
金銭的な事や事務的なことを淡々と進めるだけです。
後見人は家族のように頻繁に接することはありません。
何人もの人たちの事務業務や見廻りをすることが
公的な成年後見人の仕事なのですから。

介護の相談をしてきたケアマネジャーも同じです。
一人で何人ものお客様に対応しているのです。
いろいろなケアマネージャーさんに会って来ましたが
毎日 多くの人の対応をしているお仕事ですから
淡々と進めるしかないのですよね。

公的な成年後見人も ケアマネジャーも
葬儀やその後の後片付けの手配などまではできない事が一般的です。
それでも 相談にのってくれたり そばにいてくれた事は
とてもありがたいことだったと感謝しています。


95歳で亡くなった彼女は
初めて会った時は 80代前半で
ぽっちゃりとした元気の良い女性でした。
英語を使ってバリバリと仕事をし、
独身でずっとひとりで頑張って生きてきた、という感じでした。
言葉の端々に自信と強さを感じさせる
ちょっときつい女性〜という印象でもありました。

ただ すでにあまり歩けない状態で
ひとりでの外出は難しい様子でした。 
知り合ってからも、 ずっと一人でお部屋で過ごしていて
毎日、いくつもの新聞を隅々までチェックすることが日課でした。
近所には知り合いはいないようでしたが
昔の仕事での友人はいたようです。

そんな彼女が ますます身体が不自由になり 介護が必要と思った時に
私は役所に相談して ケアマネジャーをつけました。
そして彼女が認知症になってきた事に気が付いた時、
成年後見人が必要だと感じた私は 弁護士に相談しました。

住まいに関わった事がご縁で 彼女の私生活を知りました。
そしてその時の彼女に必要だと思った事を
全くの他人の私がしてきました。
それは 何よりも彼女が心を開いて
私を信じてくれていたから できたのかもしれません。
いつの間にか信頼関係が築けていたのだと思います。

介護が始まってからは どんどんヘルパーさんを活用しました。
だから毎日、交互に人の出入りがあり 家の中での会話も増えました。
どのヘルパーさんたちも 「彼女は強さもあるけど 甘え上手で 可愛いおばあさん」と言って 常に笑顔で接してくれていました。
ヘルパーさんたちにも どんどん心を開いていったのだと思います。

私と彼女は10数年前までは
全く知り合いでもなく 関係ない他人でした。
彼女と私の共通の知人がきっかけで
彼女の住まいに私が関わるようになりました。


彼女は私に
住まいの設計という仕事を依頼し、
歳を重ねていくとはどういうことなのかを
身をもって教えてくれました。

そして私は彼女に
歳を重ねてからも
安心と楽しみを持って暮らしてもらうには
どうしたらよいかを 早くから深く考えさせてもらい
それを一つ一つ試行錯誤しながら実行していく事が出来ました。

私は彼女から 歳を重ねてからの生き方と
人の最期というものを いろいろ学ばせて頂きました。

そして 今、関わってきた私たちは
彼女に感謝の気持でいっぱいになっています。

心を開いて 外部を受け入れることは
自分自身はもちろん周りも「ありがとう」という気持ちにさせ
人生の最期を穏やかに 迎えることができるのだと
改めて教えてもらいました。

頼れる家族がいなくても
自ら心を開いて 外部の人の助けを受け入れた事によって
彼女は 誰にも迷惑をかける事なく 周りの人達にも
幸せな気持ちを与えて 最期を迎える事ができたのです。

これこそが 私が目指している『家開き』の姿のひとつなのです!

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